美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。
なお、過去のエッセイをご覧になりたい場合は、
「美術館通信」コーナーよりpdf形式でご覧ください。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.47
台湾へ行ってきました。
第一の目的は台北とその近辺に残る近代化遺産の見学です。
台北では総督府など日本の統治時代の建造物が保存活用されていました
(日本統治の痕跡を残さないように取り壊してきた韓国とはこの点が異なります)。
また、台北市内からバスで1時間半あまりの金瓜石鉱山、台北駅から鉄道(MRT)で
1時間あまりの北投温泉にも日本統治時代の建物が史跡として保存管理されていました。
第二の目的は、国家災害防救科技中心センター訪問です。
台湾は日本と同じように地震と台風の多い国で、数年おきに大きな被害を受けています。
中でも1999年9月21日の集集大地震は2400名を超える死者を出し、
復興にも長い時間と巨額の予算を必要としました。
陳主任から伺ったお話は東日本大震災の復興にも重なるところが多く、
大災害からの復興の難しさを感じました。
ここまでは私が理事をつとめているNPO法人いわて景観まちづくりセンター
(理事長は岩手大学農学部の三宅諭准教授)のメンバー10名と同行した視察です。
彼らが帰国した後、私はひとり台湾に残って、
台湾で一番大きな湖である日月潭を一周するサイクリングをしてきました。
自転車は日月潭にあるGIANT(質量ともに世界最大の自転車メーカー)の
サイクルステーションでロードバイク(長距離競技用のスポーツ自転車)を借りました。
これが第三の目的ですが、私としてはメインイベントでした。
台湾の人々はとても親日的です。
日本による統治が台湾に近代化をもたらしたことに感謝の念を抱いているのだそうです。
また、こんにちの経済的な関係が、政治の壁を超えて両国の友好を深めています。
旅の間、2009年に行った北京・上海としばしば比較していました。
結論から言うと、台湾と中国(正式には中華民国と中華人民共和国)は似て非なる国です。
一番の違いは国民性でしょう。
北京と上海の人には申し訳ないのですが、台北の人のほうが
ソフィストケイトされていて(民度が高いという言い方をしてもいいでしょう)、
私たち日本人と似ている部分が多いと感じました。
食べ物もおいしく、まったく飽きませんでした。
長旅ではこれが何よりですよね。