当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.180
「芸術の秋」とは、夏が終わって寒くなり、屋外での活動ができなくなった時期に、屋内で芸術作品に触れ合って過ごそうというものです。しかし、近年の夏は外での活動が憚られる猛暑に見舞われています。こういうときは涼しい美術館で過ごすのがいいと思います。
好評を得ている企画展『紙の上の冒険』をサクッと紹介しましょう。
積極的に展覧会活動を行っている伊山桂さんは、展覧会ごとに作風が変わるので、今度はどんな世界を見せてくれるのだろうと期待させてくれます。「次から次へと新しいアイデアが浮かんでくる」ため、それを描く筆が追いつかないくらいなのだそうです。岩渕毅弘さんの木炭と水だけで描かれたモノクロの大作は、風景に見えたり、雲に見えたりして面白いです。同じ技法による「顔」シリーズもなかなか圧巻です。どの作品にもピーンと張り詰めたところがあるのも特徴的です。顔彩を用いている土井潤美さんは、シンプルな線で初期のどこかセクシーな女性像の頃から一貫して独特のファンタジーな世界をつくりあげています。初めて拝見したときはてっきり版画だと思ったのですが、学生時代に版画を学んだ影響なのだと後にわかりました。
最もポピュラーな画材である紙に三者三様の世界が表現されていて、ひとつひとつの作品と向き合っていると時間が経つのをすっかり忘れてしまいます。