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芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.185

当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。

 

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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.185

 

 熊と地震に脅えているうちに年が明けました(これを書いている時点ではまだ「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出ています)。

 熊は冬眠する生き物なので、冬の間は脅えなくてもすむはずですが、市街地に出没するアーバンベアは冬期も活動するらしいので油断できません。熊の親子の映像などは、見ている分には微笑ましいのですが、もし目の前にあらわれたら……。

 実は北上市の山中で熊の成獣と出くわしたことがあります。私は熊の保護活動にちょっとだけ関わっていて、そのとき熊の専門家から「声を上げず、静かに後退ること」と、かなりしつこく教わったことがあり、それが役に立ちました。野生の熊は毛の色艶がきれいだということをそのときに知りました(それくらい近くで出会ったということにもなりますが)。

 20数年前の1月末、厳冬期の北イタリアのヴァッレ・ダオスタを訪れたとき(日中の最高気温がマイナス10度でした)、街の中心部にあるエミール・シャヌー広場で「聖オルソ祭」が開催されていました。このオルソは「熊」という意味です(だから、熊祭と記憶していました)。1000年以上も続いている伝統行事で、農閑期に農家の人たちがつくった木工品を売っています。私は自分の干支である「鶏」の小さな木像をお土産に買いました。かの地で鶏は「勇気」や「強さ」の象徴なのだそうです。民族衣裳を着た人々によるパレードも印象的でした。

 「熊」と「冬」というキーワードが、あの忘れがたい旅のことを思いださせました。ともあれ、熊も地震も鎮静化することを切に願いつつ、本年もよろしくお願いします。

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