当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.167
彫刻家の舟越桂さんが3月29日に亡くなられました。
桂さんは、クスノキを素材にした木彫りの半身像に彩色し、眼球に大理石を用いた独特の作品で知られています。2000年頃から作風が大きく変わり、それにつれて顔の表情にも変化が見られるようになります。これはいささか乱暴な言い方かもしれませんが、クールからウォームへと変化してきました。
私は1999年にメトロポリタン美術館で思いがけず桂さんの作品に出会い、とても感激したものです。また、その年に上梓した『オートバイ・ライフ』(文春新書)には、革ジャンを着たライダーを思わせる半身像の写真を使わせていただきました。2004年に岩手県立美術館で『舟越桂展』が開催されたとき、初めて桂さんにお目にかかって、作品の写真使用を許可していただいたことへのお礼を申し上げる機会を得ました。
72歳とまだお若かったし、変化しつづける創作活動の今後も楽しみだっただけに残念でなりませんが、私たちに素晴らしい作品を残してくださって、ありがとうございました。今頃は天国で亡父保武氏、2017年に先立たれた実弟直木氏らと語らっていらっしゃることでしょう。ゆっくりお休みください。