当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.153
今年もコロナで年が明けました。とはいえ、昨年からウィズ・コロナに方向転換したことによって、伝統行事をはじめ、イベント、コンサート、美術展などが増えてきましたから、一昨年あたりとはだいぶ変わってきたように感じています。
ただ、私の場合は妻の職場の関係で県外(特に首都圏)への外出を制限されているため、首都圏の美術展にはほとんど出かけることができませんでした。行けなかった美術展の図録を取り寄せ、それを見ては溜息をつくばかり。特に日本では初めて本格的に紹介された『ヴァロットン展』と、西洋美術の歴史を優れた収蔵品で俯瞰する『スコットランド国立美術館展』は、無理をしても行くべきだったと後悔しています。
そういう中で出かけた宮城県美術館(仙台市)の『ドレスデン国立古典絵画館展』は、思い出深いです。この美術展の目玉はフェルメールの《窓辺で手紙を読む女》でした。長蛇の行列を予想していましたが、拍子抜けするほど空いていて、修復を終えて本来の姿に戻った名画をじっくりと観ることができたうえ、後の多くの画家に影響を与えたオランダ絵画の巨匠たちの作品をたっぷりと味わってきました(美術館だけ行って、牛タンも食べずにさっさと帰らなければならなかったのは残念でしたが)。
ちなみに、現存するフェルメールの作品は30数点しかなく、そのうち海外の美術館で観たものも合わせると私は今回で20作品を観たことになります。
コロナ禍でまだまだ困難な状況にあって、フェルメールの静謐な美が与えてくれた心の平穏を大事にしていきたいと思っています。