美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.86」
日々、寒さが増していく今日このごろです。
私は毎年、この時期に衣類の整理をします。
夏物を仕舞い、冬物を出すのです。
整理をしていて迷うのが、春秋物です。
ふいに暖かくなることもあるので、すべて仕舞ってしまうと着るものがなくて困ることになります。
いったん仕舞ったものを出すとなると、これがまた面倒でして・・・。
私の衣類を整理していてまず気がつくのは、ブラックとグレーが多いことです。
ジャケットにしろパンツにしろシャツにしろ、ほとんどがその2色といっていいでしょう。
次いでワイシャツ(白)、ジーンズ(紺)、チノパンツ(黄土色)という具合です。
もともと服装については保守的で、若いころから渋好みだったこともあり、黒っぽい服装になってしまいました。
原色を使った衣類は着たことがありません。
ところが、今年になって私の服装に少しずつ変化が訪れています。
明るい色の衣類を着るようになってきたのです。
歳を取ると体から発する雰囲気が沈んだトーンになっていきます(実際に肌の色合いが若い人に比べて暗めになります)。
これを「落ち着いた大人の雰囲気」と前向きにとらえることもできるのですが、黒っぽい服装はその沈んだトーンをさらに暗く見せてしまうようです。
それが明るい色のシャツを着るだけで明るいトーンに変わるのです。
さらに、明るい色の衣類は気分も明るくしてくれることを知りました。
昔から「歳を取ると服装が派手になる」といわれています。
私には縁のないことだと思っていましたが、それにはこのように合理的と言ってもいいような理由があったのです。
「何か今日は今ひとつ気分がパッとしないな」というときは、思いきって明るい色の服を身につけるようになりました。
もっとも、真っ赤なシャツを着る勇気はないので(たぶん似合わないですし)、明るい紺色のシャツを着るという程度の違いです。
私の場合、それでも充分に効果があるようです。