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芸術監督のショートエッセイ 石神の丘から vol.70

美術館で毎月発行している小さな情報誌

「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、

芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。



なお、過去のエッセイをご覧になりたい場合は、

「美術館通信」コーナーよりpdf形式でご覧ください。





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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ

「石神の丘から vol.70」






前に私の映画体験について書きましたが、今回は音楽のことです。

たいていの音楽ファンは劇的な出会いというべき音楽体験を持っているものですが、私にはそういう体験がありません。
私が育った家は大きな映画館の建物の中にあったので、四六時中、音楽(サウンドトラック)が聴こえているという特殊な環境だったのです。

洋画専門の映画館(盛岡にあった国劇)でしたから、映画音楽はもちろんですが、映画で使われていたジャズやクラシックも自然と耳に入ってきました。
後年、ジャズやクラシックに敷居の高さを感じず、親しみをもって接することができたのはそういう体験のおかげだったと思います。

ビートルズも映画で知りました。
小学生だった私はビートルズをクレイジーキャッツのようなコミックバンドだと思いこんでしまい(映画がそういう内容でしたから)、「衝撃的な音楽体験」にはなりませんでした。出会いが早すぎたともいえます。

あのころは映画館がコンサートホールの代わりに使われることもしばしばありました。
ベンチャーズなどのエレキ・インスト(テケテケですね)が大流行だったころです。
そういえば、川口のいとこがエレキギターを持っていて、とても羨ましかったのをよく覚えています。

私がギターをはじめたのは中学校に入ってからです。
もうエレキ・インストブームは去っていて、フォーク(後にニューミュージックと呼ばれるようになる)が台頭してきたころです。
高校に入るころにはロックに興味が移っていました。
それにともなって、ギターもエレキギターに変わりました。

ただ、当時はエレキギターを持っているだけで不良扱いされ、コンサートに行くことも学校で禁止されていました。
自分たちが出る自主コンサートを開催することも禁止されていましたが、もちろん、そんな規則を守っていたら今の私はなかったでしょう。

大学に入って好きな音楽活動を存分にやれるようになったとき、初めて「自由」の意味が実感できました。
この続きはいずれ改めて。

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