当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.164
県外への外出を控えていた一昨年と違って、昨年は時間(とお金)をやりくりしてたくさんの展覧会へ足を運びました。特に印象に残っているものを簡単に振り返っておきます。
『ルーヴル美術館展 愛を描く』(国立新美術館/3月1日~6月12日)ではロココ美術を再発見することができました。私はルーヴル美術館に3度、行ったことがあるので、久しぶりに再会した作品もありました。ただ、ルーヴル美術館に行った30代から40代の頃は印象派がマイブームでオールドマスター(18世紀以前の絵画)にはあまり興味がなかったため、今回、王侯貴族のために描かれたそれらの美しさに改めて心が奪われました。年齢とともに美術の見方や好みが変わるものなのですね。
『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン』(アーティゾン美術館/9月9日~11月19日)も忘れられません。当代随一の人気画家である山口晃(伝統的な「やまと絵」に現代の人物やモチーフを紛れこませる作品でよく知られています)が、アーティゾン美術館のコレクションからインスパイアを受けて制作した新作など「山口晃の世界」を存分に味わうことができました。美術館というところでは観覧者はたいてい無表情かしかめっ面なのですが、この展覧会では笑顔が溢れていたのも印象的です。
というわけで、世相が暗いせいか、2023年は明るい企画展が心に残りました。