当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.162
大好評のうちに『開館30周年記念展 三沢厚彦 ANIMALS in ISHIGAMI no OKA』が幕を閉じました。たくさんの方に足をお運びいただきました。ありがとうございます。
今回はやはりコロナ禍の中で制作された《Animal 2020-03(キメラ)》がみなさんに深い印象を与えたようです。全長およそ3・5メートル、重さ1トンあまりという大きな作品ですから圧倒的な迫力があります。でも、その背中にアマビエを見つけたときに、もう一つ別の違った感慨が湧くようです。
100年後、いや、50年後の世界では、今のコロナ禍などすっかり忘れられていると思います。そのとき、三沢さんの〈キメラ〉をどこかの美術館で観た人は、背中に不思議な生き物のようなものがあることに疑問を持つに違いありません。そして、三沢さんがこの作品を制作した頃に世界中の人々が感染症に脅えていたことを、〈キメラ〉を通して知ることになるでしょう。
「芸術なんてしょせんは浮世離れしたもの」と思っている方が多いのですが、芸術家はこのように社会や環境をとらえて作品にしていることを忘れてはならないでしょう。