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芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.159

当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。

 

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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.159

 

 一世を風靡したYMOのメンバーだった高橋幸宏と坂本龍一が相次いで亡くなり、ファン(私はお二人それぞれの活動のほうがYMOよりも好きでしたが)の一人として気分がふさぎがちな夏を迎えました。そして、7月11日には作曲家・指揮者の外山雄三さんの訃報がありました。およそ一カ月半前のコンサートの最中に体調不良のため降板し、その後はご自宅で療養なさっていたそうです。享年92ですから、現役のまま天寿を全うしたと言えるでしょう。

 1980年前後にYMOが世界を席巻するより20年ほど前の1960年、外山雄三率いるNHK交響楽団は世界一周コンサートを行います。そのアンコール用に外山さんご自身が作曲された「管弦楽のためのラプソディ」は世界中のクラシックファンを熱狂させたといいます。

 もう15年ほど前になりますが、その外山さんが仙台フィルハーモニー交響楽団の音楽監督をつとめられていた頃、ある雑誌の対談でお目にかかりました。外山さんは「子どもの頃に〈仙台の伯母〉と呼んでいたお宅に遊びに来たことがあります。いま思えば、あれは土井晩翆家でした」と仙台との縁などをお話ししてくださいました。

 もちろん、クラシック音楽の話も大いに盛り上がったのですが、「君は詳しいね」とおだてられた私は調子に乗って「音楽は第二の専門ですから」と応じたのです。厚顔無恥とはこのこと、恥ずかしい思い出です。

 10年前、岩手県民会館で外山さんがNHK交響楽団を指揮したコンサートの後で楽屋へお邪魔したときは、「お、岩手のディレッタントが来てくれた」と顔をほころばせました。楽団員には厳しくて、鬼のように恐れられていた外山さんですが、我々ファンにはとても優しい紳士でした。あの穏やかな眼差しと上品な語り口を私は決して忘れることはないでしょう。

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