当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.150
ここ数年、クラフトへの関心が高まっているようです。それを反映するように、岩手県立美術館では民藝運動を展開した柳宗悦を主軸に、関連する人物や品々を紹介する大規模な企画展『東北へのまなざし 1930-1945』(4月9日~5月15日)が開催されました。
そして、岩手町では『岩手町クラフト市』(9月3~4日)に、驚くほどたくさんの人が訪れました。盛岡でも『北のクラフトフェア』(10月8~9日)に全国からクラフトが結集し、こちらもたくさんの来場者がありました。まさにクラフト・ブームの到来です。
ところで、しばしば「クラフト」は「民芸品」と「工芸品」が一緒くたにされますが、クラフトは工芸品を指します。民芸品は作った個人名ではなく、「一戸町の手編み籠」というように産地が作家名の代わりになります。一方、工芸品は「吉田○○さん作のガラス食器」というように「作家性」が重要な要素となります。アートにも近いと言っていいでしょう。
とはいえ、どちらも「手仕事」であることに変わりはありません。大量生産される工業製品からは得られない「何か」を持っていることも共通しているでしょう。
秋の夜長、私は現代の「民芸」である浄法寺漆のマイ盃で熱燗をいただいています。