当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.149
石神の丘美術館では、石彫家 片桐宏典さんとケイト・トムソンさんの『抗う波の軌跡 浮島彫刻スタジオの30年』展を10月30日まで開催中です。
岩手町では国際石彫シンポジウムの貴重な遺産である石彫作品が随所で見られることから、「石の彫刻」をとても身近に感じていますが、美術史をひもとくと、個人の表現としての石彫芸術が日本に登場するのは明治以降のことです。一方、西洋で石彫は紀元前の古代ギリシヤ・ローマや古代エジプト、さらには石器時代にまでさかのぼることができます。そして石彫は、それだけ長い歴史があるのに今なお変化と発展をしつづけている「古くて新しい芸術」なのです。
浮島彫刻スタジオの二人の彫刻家は、その「新しい石彫」を切り拓き、牽引しつづけています。石神の丘美術館の屋内外に展示された作品から私は、物言わぬ石がお二人との出会いを喜んでいるように感じました。
ところで、日本では古くからもっぱら木彫が主でした(たとえば仏像には稀に石彫もありますが、ほとんどは木彫です)。なぜなのでしょうか。片桐さんとトムソンさんの石彫を味わいながら考えているところです。