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芸術監督のショートエッセイ 石神の丘から vol.110

美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。

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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.110」

 

関東からやってきたオートバイ仲間と一緒に岩手県内をツーリングしてきました。

 

秋晴れのもと、しばしば紅葉に目を奪われてオートバイを停めると、遠来の仲間たちは口々に「岩手はオートバイの楽園だ」と盛んにカメラやスマホのシャッターを切ります。

晩秋の冷気に慣れていない一人は手がかじかんでしまい、スマホをうまく操作できなくなり、もうじきやってくる厳しい冬の前触れを察したのか、彼は「今は楽園だけど、これからが大変なんですね」と呟きました。

 

私も同じことを考えていました。

秋は風景もきれいですし、食べ物もおいしいです。

それは、長く厳しい冬を迎える前のプレゼントのようなものなのだと…。

 

やがて冬になり、雪や寒さに堪える日々が続きます。

もう雪かきはイヤだと誰もが心身ともに根を上げるころに春がやってきます。

 

岩手の春の美しさは格別です。

春の日だまりの暖かさもまた格別です。

明けない夜がないのと同様に、明けない冬もありません。

だから、私たちはどんなにつらい冬でも乗り越えることができるのです。

 

人生も同じではないでしょうか。

多少つらいことがあっても、その向こうに春のような日が来ると思えば我慢ができます。

たとえ税金が高かろうが、消費税が家計を苦しめようが、安心して子どもを生み育てることができるのであれば辛抱できるでしょう。

安心して老後を過ごせるとわかっていれば、喜んで税金も納めるでしょう。

 

ところが、今の世の中、ちっとも春の兆しが見えません。

一部の政治家と一部の官僚たちが「我が世の春」を年がら年中、謳歌しているだけです。

 

敗戦後から高度経済成長時代にかけて、私たちの先輩たちは、今とは比べ物にならないほどの苦労を重ねました。

そして、自らの力で春を築きました。

苦労のし甲斐のある人生だったと思います。

 

「冬を乗り越えれば明るい春が来る」

 

そういう世の中に、私たちはしなければなりません。

秋のツーリング中、オートバイのシートの上でそんなことを考えました。

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