美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。
********************************************************************
石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.92」
私が岩手町立石神の丘美術館の芸術監督に就任した2009年の春(4月25日~7月5日)に、その記念事業として『印象・いわて』展を開催させていただきました。
展示した石川酉三、板垣崇志、重石晃子、杉本みゆき、高橋和、長谷川誠、畠山孝一の作品は必ずしも「岩手の風景画」というわけではなく、「岩手の風土を感じさせる絵」でした。
このとき、盛岡市が所蔵している重石晃子さんの作品を展示できたのは本当に光栄なことでした。
重石さんの作品は私に「北東北のモダニズム」という問題意識を芽生えさせたきっかけになっているのです。
北東北(青森、秋田、岩手)は、遅れた土地というイメージで語られがちです。
確かに、実際に経済の面ではそうかもしれませんが、芸術文化に関しては明治以降、北東北出身者たちが近代化を牽引してきたのです。
今、岩手県立美術館で大規模な展覧会が開かれている萬鉄五郎はその嚆矢であり、棟方志功、松本竣介、深沢省三・紅子夫妻らがそれに続きます。
深沢さんの愛弟子で、現役の重石さんもその延長線上の画家といっていいでしょう。
重石さんはその作風もさることながら、佇まいというか存在そのものがモダンで美しい。
凛として颯爽、重厚にして軽やかです。
半世紀以上に渡って「北東北のモダニズム」を牽引なさってきた実績が、その美しい佇まいの底にあるのではないでしょうか。
岩手町立石神の丘美術館では4月22日から『風を追いかけて―重石晃子展』を開催中です。
『印象・いわて』展の終了後に、名残惜しい気持ちで盛岡市にお返しした作品も再び展示させていただいています。
いい絵を観ると、脳内でセロトニンという物質がたくさん作られるそうです。
セロトニンが不足するとイライラしたり、不眠になったり、鬱病にかかりやすくなるともいいます。
重石さんの作品はセロトニンをたくさん出してくれそうですから、この機会にぜひ足をお運びください。