美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.78」
石神の丘美術館では、『写真と資料でみる 川口秋まつり復活三十年展』を展示室で、『第16回岩手町埋蔵文化財展』をホールで開催中です。
昨秋、復活30年記念を迎えた川口秋祭りの大名行列に私は参加させていただき、一生の思い出となりました。
盛岡からも知人らが駆けつけてくれ、「こんなに素晴らしいお祭りがあることを知らなかった」と驚いていました。
人口減少にともない、貴重な地域資源である民俗芸能が年々姿を消していく傾向にあります。
川口秋祭りを岩手町が一丸となって盛り上げていくことが今後の課題でしょう。
この企画展がその一助になればと思っています。
岩手町で発掘される土器類も貴重な地域資源です。
岩手県には縄文遺跡がたくさんあり、珍しい土器も多数発掘されています。
それらは御所野縄文公園、岩手県立博物館、盛岡市遺跡の学び館などで展示されていますが、ごく一部にすぎません。
岩手町には残念ながら縄文土器などを常設展示する施設がありませんので、石神の丘美術館で毎年3月に展示しています。
縄文土器には考古学的な価値があるだけでなく、私たちの遠い祖先が持っていた美意識を知ることもできます。
「縄文の美」を再発見したのは、「芸術は爆発だ」で知られる岡本太郎でした。
そもそも縄文土器は食物などの保存や煮炊きをするための道具でした。
その縄文土器に岡本は東北の旅で出会い、美を見出したのです。
さらに岡本は、花巻の鹿踊りに縄文の流れを感じ、縄文文化が現在の東北に根強く息づいていると記しています。
このように縄文土器(と、縄文土器を生み、育んだ縄文文化)に接することによって、私たちは「社会」、「歴史」、「美学」、「美術史」、さらには「家庭科」なども学ぶことができるのです。
この機会にぜひ縄文土器をご覧ください。
『川口秋まつり復活三十年展』、『第16回岩手町埋蔵文化財展』ともに入館無料です。