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芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.178

当館が毎月発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純の
ショートコラムをご紹介します。

 

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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.178

 

 〈花とアートの森〉で冬の間は雪に埋もれて耳だけを出していたウサギの彫刻(三沢厚彦《Animal 2020-01B》)が姿を現しました。園内の花々も咲き始めて、散策に絶好の季節となりました。

 まだ風は冷たいのですが、歩いて体が温まってくるとそれも心地いいものです。陽差しを喜んでいるのか、野鳥の声も賑やかです。こうしていると、大げさなようですが、今を生きていることのありがたみを感じます。

 昨夏に親友が急逝し、年末には従兄との永遠(とわ)の別れがあり、私は心の整理がつかず、鬱々とした日々を過ごしてきました。何か心のバランスを失ってしまったようで、気持ちが落ち着かず、何事にも集中できませんでした。

 三沢厚彦さんのANIMALSシリーズと、風をとらえて変幻自在に動く西野康造さんの作品を眺めながら歩いていると、そんな私の心がゆっくりと整っていくのがわかりました。芸術と自然の効用なのでしょうか。気持ちが前向きになるのです。

 そういえば、東日本大震災後にこんなことがありました。岩手県立美術館2階の舟越保武展示室で、知人とばったり会いました。そのときの彼の「美術館というところに初めて来た。震災で痛めつけられた心が癒されていくのを感じた。芸術って凄いものだな」という言葉を聞いたとき、私はなぜか込み上げてくるものがありました。

 あのときの彼の言葉の重みを〈花とアートの森〉を歩きながら再認識することになりました。

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