美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。
なお、過去のエッセイをご覧になりたい場合は、
「美術館通信」コーナーよりpdf形式でご覧ください。
********************************************************************
石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.50」
8月第1週の週末、八幡平アスピーテラインを自転車で上ってきました。
自転車といっても、長距離レースで使われるロードバイクという特殊なものでママチャリとはずいぶん違います。
直径が大きくて細いタイヤと、軽い車重(ママチャリの半分くらい)が特徴です。
もっとも、自転車であることに変わりはありませんから、エンジン付きの乗り物と違って、自分の力以上の力は出ません(これが自転車のいいところです)。
盛岡の中心部から見返り峠の駐車場までおよそ60キロという長い距離に加えて、最大斜度が10パーセントという驚異的な上り坂のある八幡平アスピーテライン越えは、ロードバイク乗りにとって挑戦しがいのある大きな目標です。
私は4年前の夏に初挑戦し、完走しました。
といっても、途中で何度か休憩をはさみました。
一緒に行った仲間の中には一度も足を地面に着かずに上りきった猛者もいます。
二度目の挑戦となる今回は「足を着かない」ことを密かな目標としましたが、これはまったく無理でした。
自分の力で上った見返り峠からの眺望はどんな名画も及ばないほど美しく、荘厳で、崇高でした。お天気に恵まれて盛岡は暑くなった日ですが、八幡平頂上付近は20℃に達しなくて、汗が引くと体がどんどん冷えていきました。
見返り峠から秋田側に下り、銭川温泉で一泊。翌日は鹿角、安比、西根を通って帰ってきました。
これも100キロを越えるコースです。
前日に八幡平を越えているため体力もかなり消耗していますから、気力で走りきったようなものです。
一緒に行った仲間の中で、私は2番目の年長者でした。
最年長は私のロードバイクの師匠で、もう70歳になろうとしています。
師匠の走りに私はまだまだかないませんが、そのことを喜んでいる自分がいました。
いつか師匠と岩手町をサイクリングしたいと思っています。