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芸術監督のショートエッセイ 石神の丘から vol.61

美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。

なお、過去のエッセイをご覧になりたい場合は、
「美術館通信」コーナーよりpdf形式でご覧ください。

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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.61」

開催中の『鎌田紀子ワールドへようこそ』展が、夏休み中の親子連れで賑わっています。
これほど幅広い年齢層の来館客を迎える企画展は石神の丘美術館でも異例のことです。

そもそも、展示内容そのものが「異例」かもしれません。
鎌田紀子さんがつくる人形は、決してとっつきのいいものではありません。
ときに「美術館がお化け屋敷になった」という声も聞かれます。

私も最初はただ不気味だとしか思いませんでしたが、今はある意味で畏敬の念をもって鑑賞しています(こうなるまでに3、4年ほどかかりましたけれども)。

日本では昔から幽霊や妖怪などの化け物が屏風絵、掛け軸、襖絵、浮世絵(版画と肉筆)の題材にされてきました。
鎌田さんの作品はその系譜につらなるものという見方もできます。
ただ、大きく異なるのは、それらが民間伝承や物語などに登場する化け物であるのに対して、鎌田さんの人形は独自のものだという点です。

鎌田さんの人形は「怖い」だけではなく、どこか「かわいい」と感じさせるところがあります。
しぐさ(ポーズ)や表情に純粋さと天真爛漫さが表れているからだと思います。

かわいいと感じたら、あともう数歩で鎌田ワールドが持つもうひとつの魅力に触れることができるでしょう。
それは、「聖人」の側面です。

鎌田さんの作品には、そこはかとない哀しみが漂っています。
私たち人間の哀しみを背負っているようにも見えますし、私たち人間の愚かさを嘲笑うのと同時に哀しんでいるようにも見えます。
それこそ聖人の姿勢にほかなりません。

美術史をひもといてみると、洋の東西を問わず、画家(日本では絵師)たちは聖人をあえて醜く描いてきました(人間を容姿で判断してはならないという戒めの意味があるそうです)。
鎌田さんの作品はその系譜にもつらなっていると思います。

鎌田紀子ワールドは、昨夏、横須賀美術館でも好評を博しています。
この機会をどうぞお見逃しなく。

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