当館が発行している小さな情報紙「石神の丘美術館通信 イシビ」にて連載中の、芸術監督・斎藤純のショートコラムをご紹介します。
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石神の丘美術館芸術監督・斎藤 純のショートコラム vol.189
草花を観ていると、不思議なできごとに出会います。愛情を込めて丁寧に育てられた草花は、まるで「ありがとう」と言っているような美しい花を咲かせます。それを見ている人間たちも、「いいえ、こちらこそ。きれいに咲いてくれてありがとう」と応じます。つまり、草花と会話をしているのです。
登山の最中、登り坂が続いて苦しくなった頃に高山植物と出会います。高山植物は、急斜面で土地が痩せていて、冬は猛烈に寒く、長いこと雪に覆われてしまうところに可憐な花を咲かせています。そんなとき、「こんな厳しいところで、私たちもこうして一所懸命に咲いているのだから、あなたたちも頂上まであともう少し頑張って」と励まされているような気がするものです。
もちろん、草花と人が言葉でやりとりをするなんてできません。そもそも草花には知能も感情もありません。だから、草花が「感謝」をすることも、疲れ切った登山者を「励ます」などということもありえないのです。それでも、私たち人間は草花(あるいは自然)との交感を通じて、慰められ、励まされ、癒されたりするのですから、不思議なものです。
いつだったか、ある植物学者が「植物に感情はないが、人間に特別な感情を抱かせる特別な存在である」とおっしゃっていました。まったくそのとおりだと思います。
石神の丘美術館〈花とアートの森〉は今まさに百花繚乱の季節です。散策路でしばし歩みを止めて、もの言わぬ草花との「心のやりとり」を楽しんでみてください。

2026年06月13日 Saturday







